参考になる本など(9)-チベットの生と死の書

チベットの生と死の書/ソギャル・リンポチェ著 大迫正弘+三浦順子訳 講談社+α文庫 2010年

「死んでも終わりではない」と確信することができたら、生き方がガラリと変わるのではないでしょうか?

 

真夜中に目が覚めた時にしばしば感じる、漠然としてはいるが底の知れない死への恐怖は誰しも経験していると思います。

身近なところでは、病気に備えて医療保険に入ったり、一年に一回成人病検診を受ける。

あるいは、「生きてるうちに楽しまなきゃ」と、連休には海外旅行に行ったり、趣味をいくつも持ったりする。

 

そんな生き方の背景には、自らが死ぬことを恐怖して、それをできるだけ先に延ばそうとする思いがあります。

また、死んだら何も残らないと思っているので、生きているうちに、そして健康でいるうちに、肉体で感じられる快楽を享受したいという気持ちがあると思います

 

「チベットの生と死の書」は、そんな「常識」を一笑に付すが如く、死に際から死んだ後のプロセスを詳細に語ってくれています。

死んで終わりではなく、生きているうちにした/しなかった様々なことをそのまま持ち越して転生する、あるいは自分本来の生き方を成し遂げた人は輪廻転生を脱する(解脱)、というのです。

 

そんな風に考えると、誰にでも訪れることだし、死ぬのもまあ一つの区切りかな、と思えてくるかもしれません。

また、生き方を持ち越すのなら、刹那的な生き方をする必要はないと感じるでしょう。

そうすると、生にのみ価値を置いた現代日本の社会常識、医療や経済活動への見方が変わり、自分の生き方が明確になってくると思います。

 

かなり厚い本ですが、非常に読みやすい文章です、そして内容は深いです。

これを読んでから死に臨むのとそうでないのとでは、決定的な違いが出ると思います。

ちなみに、私は、親しい人がいつか死に際した時のために、3冊持っています。

一点残念なのは、現在絶版中でAmazonの中古本でも定価で税抜き1524円のところをだいたい3000円前後で売られているところですが、それでも是非おすすめしたい一冊です。

 

・著者のソギャル・リンポチェ氏は映画「リトル・ブッダ」にアメリカ在住の教師役で出演しています。映画は、高僧の転生者をめぐるストーリーで、この本を読む導入として観ると入りやすいです。

 

・サッカーチーム・バルセロナの元主将、カルレス・プジョル氏がお母さんの死を乗り越えたのは、この本を読んだことが契機でした。

 

2015年12月26日

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