うつからのメッセージー「改訂精神科養生のコツ」

「改訂精神科養生のコツ」 神田橋條治著 岩崎学術出版社 2009年

ココロが大事だとか、

快/不快の感覚を基準にするだとか、

前回書きましたが、

 

慣れていない人には、そもそも具体的なココロの感覚がどういうものなのか分からないのだ、というお話をお聞きしました。

 

自分を振り返ってみても、たしかにそうだったかもしれない。

これは舌足らずだった、と思い、今日はうってつけの書籍を紹介します。

 

「改訂 精神科養生のコツ」/神田橋條治著 です。

(必ず「改訂」版をご覧ください。)

 

この本は、そもそも医師とかカウンセラーでなく、一般に向けて書かれたものです。

また、うつに限ったものでは全然なく、広く、全ての精神的なケアが必要な方を念頭においたものです。

 

小難しいココロの話は無しにして、分かり易いカラダについての話です。すごく実用的な内容です。

でも、カラダとココロは密接に繋がっているので、「精神科養生」となっているのです。

 

紹介に代えて、以下少し抜き書きします。

 

この練習をいろんな人々に試してもらってはじめて分かったことがあります。

それは、「気持ちがいい」という感じをつかむのに慣れていない人がとても多いということです。

そのような人は、多分、これまでの人生で「・・・したい」よりも「・・・すべき」という方針を大切にして生きてこられたのでしょう。

自分の欲求にそうよりも周囲からの助言や命令や期待や価値観にそって生きてこられたのでしょう。

その結果、自分の欲求をつかむ能力が育たなかったのでしょう。あるいは、欲求を無視する能力を身につけたのでしょう。

ただし、そのような人でも、不幸な状態になっているいまは、「苦しい」「辛い」「いまのこの状態から抜けだしたい」という気持ちを感じることはできます。

ですから、いくらか抜け出せた時の「あぁ、楽だ」「ホッとした」という瞬間はつかめます。

これも「気持ちいい」の一種ですから、そこからスタートしてください。

次第に「気持ちがいい」「気持ちが悪い」「好き」「嫌い」の感じが分かるようになります。」(19ページ)

 

好奇心に裏打ちされている意欲と好奇心を伴わない意欲を区別することで、意欲の質を判定することもできます。

好奇心の伴わない意欲は、養生の反対の、病気を悪化させるこころの働きを含んでいることが多いのです。」(37ページ)

 

「内側へ注意を向け変える練習を続けてゆくと、ある時点で「気持ちがいい」という感じが変化することがあります。

(中略)その気分は「気持ちがいい」という言葉よりも、「充実」とか「定まる」とか「自己肯定」とかの言葉がなじみます。」(37ページ)


2016年2月17日