心理のよもやま話-怒り出す医者

怒り出す医者

精神科等を受診した時、「薬を飲みたくない、飲まないで治したい」と言ったら、医者が怒りだして「あなたの面倒はみられない、他所に行ってくだい」と言われた、そんな話をときどき耳にします。

 

日本の精神科医・心療内科医のなかには、医師は薬で治すのが専門でそれが精神医療の「本道」、カウンセリングなどは補助的なものに過ぎない、と教えられ、そう思い込んでいる人がいます。

フロイトを読んだことがないという医師も相当いると思います。

 

フロイトを持ち出さずとも、自分を頼って訪ねてきた人間に対し、怒りだして放りだすような言動をすることは、相手の身になって考える、という人間として医師として最低限の基本姿勢がないということなのですが、

 

どうも、彼らには特権的専門性のゆえか「医師は◯◯すればよいのだ」というような頑な思い込み、というか、それしかやり方を知らない、という窮屈な雰囲気があります。

そして、そのやり方以外の方法を聞かれると、それしか知らない、ということを悟られたくないがために怒り出すことで、その知見の狭さを隠そうとしているように見えます。

 

また、医師という社会的地位にかまけて、患者を自分よりも下に見る、「患者は医者の言うことを聞いておけばいいんだ」というような意識がその配慮のない言動に表れているとも見えますし、

実は、自分のやり方に自信をもてない為、患者より上に立つことで、その自信の無さからくる不安を誤魔化しているのかもしれません。

 

世間で知られることはありませんが、うつになる精神科関係の医師が相当いるようです。

医学部→医師という一見幸せそうな既定の「コース」を歩んでいて、医局で教えられた通りに診療して、よい収入を得、患者から先生先生と呼ばれていい気持ちになったり、思い通りにならない患者は自分のせいではなく患者の我がままのせいにしたりする、

でもある日突然虚無感に襲われて身体が言うことをきかなくなる。

医師という地位や紋切型の診療に自分を丸預けにしていたため「自分」というものがない人生を送ってきてしまった、そのことに対し本来の自分が悲鳴をあげているわけです、うつの状態です。

 

ちなみに、これも表沙汰になることはありませんが、そんなうつ状態の医師たちの中には、薬を飲むこと無く、腕が良いと評判の、心理カウンセリングができる医師のところに通っている人もいるようです。

(何だか、患者には抗がん剤を使うのに、自分の家族には使わない、という話と似てますが。)

 

と考えてきますと、薬を処方する、心理カウンセリングをする、生活全般のアドバイスをする等(要は医師、カウンセラー関係なく)いずれの行為においても、対等の関係が大前提ですし、お互いが相手の気持ちや考えに身を開いて聞き入れる準備があること、そして相手の「本当の自分」の意欲を尊重して共に前に進んでゆく姿勢、そんなことが不可欠なのかなと思います。

 

2016年6月25日