心理のよもやま話-「あ、そうか!」体験へ②苦悩

「あ、そうか!」体験へのプロセス②苦悩

①で書きました葛藤((a)対(b))があると、不安とか、会社に行けない、等の様々な悩み事や困りごとが生じてきます。

 

この時点では、(a)の力が相対的に強い(これは決していい状態ではありませんが、その人がこれまで生きるのに運転手の役割を果たしてきたのは(a)なのですから)です。

声を上げ始めた本来の自己たる(b)に対し、刷り込まれた、いわば仮りそめの自己に過ぎない(a)が驚き、(b)を見ないふりをしたり、無理やり抑えこもうとしている状態です。

 

しかしながら、(b)が声を上げ始めたことに注目すべきです。

本人は辛いですが、大局からみれば、本来の自己が実体を表しはじめている好ましい状態と考えてよいと思います。

 

わけが分からず落ち込み、カラダが動かない時期を過ごすうち、そのうち、だんだんと、(a)が(b)の存在を無視できなくなってきます。

この時期には、本人も、自分の人生を振り返ったりして、正体は分からない何か((A)や(B))に思いをはせるかもしれません。

これが「苦悩」の時期です。

 

以前書いたことがありますが、この苦悩の辛さをある程度味わわないことには、「カラダでわからない」であろうことです。

「カラダでわかる」べきこととは、今までのやり方((A))ではダメなんだと分かるということです。

こればかりは、理屈でなく、腹に応えるように諒解するしかないというのが私の実感です。

 

苦悩というと、ひとりでじっと考えこむイメージもあると思いますが、現実にはたいていの人は勇気を振り絞って心療内科等にいくと思います。

そして(残念なことに)たいていの場合は5分間診療で薬を出される(ひどい場合には薬の副作用を消すために別の薬を出されるのが重なり薬漬けになる)。薬が効く人もいるが、苦悩そのものは去ってくれない。

あるいは、ネットで検索して評判の良さそうな本を片っ端から読む。そして規則正しい生活や食事や運動に気をつかったりするが、やはり不安は残ったまま。

 

酷なことを言うようですが、こんな試行錯誤もたらい回しも、大局から見れば、意味のある苦悩かもしれません。

「もう、こりごりだ!」と実感した時、はじめて人は諦めをきっちりつけて、問題に正面からぶつかろうと思うのですから。

 

こんなふうになって、ようやく(a)が弱ってきて、(b)が本格的に動きだします。

すでに本人は(A)や(B)の存在に気づいていることでしょう。

 

ちなみに、こんな苦しい時期には、行動療法でいう「エクスポージャー」という技法は一定の効果があります。

不安が生じる状況に段階的に耐性をつけるようにし、現実の生活面での障害を少なくするものです。

耐性を得てゆく段階で、葛藤の意味に少しでも気がついてゆくと、現実生活と精神の両方で改善がみられます。


2016年9月4日