「あ、そうか!」体験へのプロセス⑤洞察
それまでの人生において指針としてきたものの、借り物の自己であった(a)に対して、本来の自己たる(b)がその(a)の役割に疑問を持ってくるようになると、内的な対話が始まります。
その対話の末に洞察の瞬間が訪れます。
その対話と洞察は、例えばこのような感じです。
「うーん、そうだな、子供の頃に、いや大人になった後も何かの拍子で無心になった時、心に浮かぶことや感覚があったな、これってもしかして(b)のものだったのかな?」
「そう言えば、そういうふうに感じる時って、今の生活にものすごい不安を感じている時だったな。でもやっぱり会社に行かなくちゃと思って、毎日会社に行っているうちにそういう感じは消えてしまった。これは(b)の言ってることに聞こえないふりをして、「毎日会社に行け」って言っている(a)に従っていたということかな?」
このように、繊細な感覚レベルの対話ができるようになると、だんだんと理性を動員して、過去の出来事や現在の生活に、現実的な整理やアクションを起こすことができる様になってきます。
「やっぱり(a)の正体は、親に身に付けさせられてきた価値観や行動パターンなんだろうな。本当は自分((b))は、こういうことをやりたかったんだ。」
「そうすると、親って、万能ではなく、多くの欠点をもったひとりの人間なんだな。」
「そうなると、自分は自分の道、つまり(b)を生きてゆこう。」
「待てよ、生きてゆくにはお金が要る。(b)を大切にしながら、(a)の便利なところだけ利用して、うまくやっていけないかな。」
このような内的対話と洞察が、一瞬のうちに訪れてくる人もあれば、時間をかけて噛みしめるように分かってくる人もいます。
内的対話と洞察は、仮りそめの自己が本来の自己に生まれ変わり、現実生活を生き抜いてゆくためのエネルギーと勇気を獲得するための過程なのだと思います。
*「「あ、そうか!体験」へのプロセス」は今回で終わりです。
2016年10月12日