したいこと/したくないこと・無上の至福
今日は、価値観の体系の中の①‐1「I(アイ)」について考えてみます。
①の「Life」はその人の人生の根幹であるものの、普段はあまり意識されず、この①‐1「私が〜する/したい」こと、つまり日常の活動、が生き方の端的な表現になります。
そして、その「する/したい」と①‐2「お金」とのあいだの塩梅を考えることが日々の営みとなってきます。
具体的には、その活動は英語の5W1Hで考えると分かり易いと思います。
まずwhatから。
・What(何をするか/しないか?)
この問いに対して「仕事」と答える人は、仕事が人生を侵食している可能性が大いにあります。
前々回書きましたように、仕事は「私が〜する」と「お金」の下位体系に位置します。
お金という便利な物差しを度外視して仕事をすると、自分に対する歯止めがなくなります(歯止めがなくなることについては後日詳しく書きます)。
ここで言う「何をするか」は通常の仕事とは全く異質の意味合いや雰囲気を持っています。
例えば、むしろ「働きたくない」というのは立派にこの①‐1の範疇に入ります。
「働きたくない」というのはごく自然な感覚です。
人間以外の動物に目を移せば、彼らは必要以上の食料(=お金)のために働くことはしません。
また、最近は事情も違うかもしれませんが、熱帯では、自然にバナナやココ椰子が実り、それを手に入れられるので、贅沢を言わなければ、ときたま簡単なアルバイトをすれば充分食べていける。
生きていくのになんとかやっていけるだけのお金(仮に月13万とします、生活保護と同水準です)を死ぬまでもらえるとしたら、
あなたは働きますか?働きませんか?
これに「働かない」と答える人は、働きたくないことを自分なりの価値として持っている人ですし、それを大切にすべきです。
しかし、月13万円を一生分くれる人がいないかぎり、「働きたくない」と「お金」のバランスをとるしかない。
そこで、13万円というお金を稼ぐために、いかに「働かない」度合いを自分の中で大きくしながら、仕事を選びそれをやっていくのかが課題になります(①‐2‐1「仕事」の範疇です)。
「働きたくない」という気持ちがその人なりの生き方であるなら、それは「仕事」よりも価値体系が上なのです(こんなことを平然と言うと、高度経済成長期であれば頭がどうかしていると思われたでしょうし、今でもそう思う人は少なからずいるでしょう、残念なことに)から、過労死などという方向とは全く違う人生の選択があって当然なのです。
その他にも、「ひとりで静かにしていたい」、「ひとと関わりたい」、「命令されたくない」などの「〜したい/したくない」という思いは人それぞれあり、それが自分の根幹と結びついているなら、大切にするべきです。
そして、そんなふうに生活していくのに必要なお金はいくらなのか、そのお金のためにはどんな仕事をするのか。
これらは、職業や趣味などのように定義可能でやることが明確なものではなく、一見曖昧模糊としていますが、自らが生きている感覚そのものです。
この感覚は、若い時は把握するのが難しいかもしれませんが、折りに触れ自らのココロに問いかけることを重ねるうちに、自分らしさの感覚が分かってきます。
上記は人それぞれの感覚についてのものでしたが、
ある程度輪郭が明確な人それぞれの「やりたいこと」も存在します。
神話学者のジョセフ・キャンベルは「あなたの無上の至福を探せ」と言っています。
これは、
なぜかは分からないが、生まれつきたまらなく好きなもの、
努力や頑張り抜きで、自然と熱中してしまい疲れないもの、
です。
①と①‐1が完全に一致した状態なので、自分の人生を自分のやり方で生きている!という人間本来の幸福感が日常活動にも溢れています。
物心ついた時から、
料理が好きだ、森の中を歩くと落ち着く、絵本が好きだ、宇宙について考えると時間を忘れる、サッカーをしたい、などなど色々あると思います。
一握りの幸運な人達は、それを仕事にし、充分にお金を得られる場合は、仕事につきものの煩わしさ(仕事上のコミュニケーション不一致、お金にまつわる雑用など)もあまり気にならないかもしれません。
こんな人は、①から①‐2‐1まで全ての価値体系が満たされています。
しかし、こういう人は例外です。
無条件に好きなことというのは、仕事に直結しないことも多いですし、それを仕事にしたとしても他人からお金をもらう以上、自分が好きでないこともしなければいけない、生活に必要なお金さえも稼げないかもしれない。
だから、自分のしたいことは大切に自分の中に保っておいて→それを極力大切にする観点で、自分に必要なお金を計算し→そのお金を得るにはどんな仕事をするか、という矢印の順に考えていけば、まず自分を仕事に乗っ取られる心配はないと思います。
そのように考えるうちに、やりたいこと/やりたくないことが色んな形をとって徐々に仕事の選択ややり方に滲み出るようになってくるものです。
次回はwhat以外の5W1Hを書きます。
2017年2月8日