ココロを大切にして働く⑪

まとめ編その3‐仕事に支配された状態

<C:仕事に支配された状態(危険水準)>

 

人生=仕事

|  (アタマ)

生き方

(ココロ)

 

アタマがココロの上位に立ち、完全にココロを支配しています。

例えば、残業しなければ自分には価値がない等と思い込んで、身体を壊すまで働き続けるけれど、自分からは止められないといった状態です。

つまりそれほどココロの働きが弱っている状態です。

 

・前回ふれた病態水準でいうと、神経症より重い水準です。アタマが完全に優位に立ち、ココロが封殺されて、アタマが生き方を規定してしまいます。

感情、感覚、野性、オリジナリティといった人間本来の生きる実感が圧迫されるのですが、その本質はアタマによるココロに対する自己否定・自己コントロールです。

自責感を伴ううつや摂食障害など、様々な精神・身体症状が現れます。

 

会社にいる毎日が際限ない苦行に感じられます。

また、生きている意味がわからなくなってしまいます。

何をしても楽しくない、何を食べても味を感じないと訴える症状も散見されます。

 

・かなり幼い時から、わき目もふらず受験だ就職だという偏狭な育てられ方をしたり、虐待まがいのヒステリックなしつけ、一見平穏なふうでいて「あなたの為を思って言ってるのよ」という親の満たされなかった願望を子供に無意識に押し付けたりすると、その養育者の価値観や行動パターンがそのまま子供のアタマに移植されてしまいます。

そんな養育者の生活や思考・行動を日々見ながら、子供が育っていくことで、その移植は子供の本来のパーソナリティを無視したまま強固になっていきます。

 

・しかしながら、ココロは存在しています。

そんなアタマの支配にココロの我慢が限界に達して、ストライキを起こします。

様々な精神・身体症状はそのサインです。

 

もし、そんな症状が起きてしまったら、出来れば自分で「おかしいな」と気付いて、恥ずかしがらず周囲に相談することが期待されるのですが、

そもそも、「周囲に相談するような弱い人間ではダメだ」とか「相談したら休めと言われて、それで会社を一旦休んだら周りから変な目で見られる」等、

弱い人間はダメ、人と違う目立つことはダメ、だという刷り込みが本人を際限ない仕事に駆り立てていて、問題意識そのものが欠落している場合もあります。

また、症状がきつくなっておかしいなと思っても、本人は上記のことから、周囲にはそれを隠して弱音を吐かない場合も多いので、精神・身体症状のサインを早期に汲み取るのは難しいかもしれません。

 

・そんなケースがあるので、労働時間を法律で制限することには一定の効果があると思います。

但し、例えば、今日はもう帰っていいよ、と言われて帰宅したとしても、仕事しか見えていない本人にすれば、仕事の進捗が心配で休養にならないことも考えられます。

つまり労働時間という「量」を規制したとしても、仕事だけが本人の価値観を占めているという「質」的な状態を変化させられない可能性があるということです。

尚、薬物が価値観というココロの問題自体に効くということはありません。

 

・やはり休養がまず第一です、身体を休ませねばなりません。

次にココロですが、

そもそもココロというものがちゃんと存在するということ、

そのココロはアタマよりも大切な自分の中心なんだということ、

精神・身体の症状はココロの正常なサインで、そのことはむしろココロがきちんと働いている好ましい状態だということ、

これらのことをまず知る。

 

そして、だんだんとココロの声を聞くことに慣れていき、その声をもとに仕事を含めて、自分の人生や生き方を再検討する、つまり「質」的な生き方にシフトしてゆく、

ということが回復への順序になるかと思います。


2017年4月8日