心理のよもやま話‐カウンセリングの実際

カウンセリングの雰囲気ご紹介

今日は、実際のカウンセリングがどんな雰囲気なのかを、エッセンスを損なわず、但し人物が特定できないように事実を変更して、ご紹介したいと思います。

キーとなった場面については、カッコと※印書き(※)で注釈を付けてみました。

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カウンセラー:本日はどのようなことで・・?

 

クライアント:会社や仕事に全く意欲を持てなくなって、会社に辿り着くのさえきついんです。これは何なのでしょうか?

 

カウンセラー:仕事も含めた広い範囲で、やりたいこと、興味のあることは、過去にはお持ちでしたか?

 

クライアント:就職する前、高校、大学の時は、古代の遺跡とか考古学に興味がありましたが、、。

 

カウンセラー:今の仕事内容を細かくみて、特にこんな感じの仕事がイヤだなと感じる仕事はあります?

 

クライアント:会議そのものもイヤですが、会議のための資料を作る過程で、色んな人のところに出向いて話を聞くこととか、同時に根回しをしなくてはいけないこととかが、もう面倒で面倒で、、、。海外出張なんて、準備の手間も時間もかかるので、とても出来ません。

 

カウンセラー:そもそも、いまの会社や仕事はやりたかったんですか?

 

クライアント:そうだ、大学の時、考古学に興味があったし、それで本も好きだったので、こつこつひとりでできそうな図書館の司書がいいかなとぼんやり思ってました。でも、就職活動しているうちに司書なんて就職も難しいと思って、結局商社に就職して、そのまま十数年経ちました。今まで問題なく仕事をしてきたんですが、なにか突然という感じでこうなってしまって、、、。

 

カウンセラー:なにか、、、会社や仕事に対して、ボタンの掛け違えをしてしまったみたいな感じがあったことは、今までありませんでした?

(※いわゆる「見立て」を始めてクライアントに提示します。但し、この時点では仮説です。クライアントの反応を注意深くみていきます)

 

クライアント:(少し考えて)あるかもしれません。一年に一度くらい、ふとこのまま生きていっていいのか漠然と不安になることがあった気がします。でも、、、、仕事の方に頭が向くと、そんな気持ちはすぐに忘れてしまいましたが。

(※「見立て」が合っていたようです。ちなみに、悩みの核心を言い当ててもらうと、ご本人の雰囲気が明らかに一変します。「気づき」へのスタートです。)

 

カウンセラー:そのあたりの感じ、司書の件とか、あるいはいまの仕事へのイヤだと感じる部分をご自分のなかで、つらつらと思ってみたらどうでしょう?

(※「ボタンの掛け違え」を見直すことを提案します。これは本人しか知りよう/決定しようがない「質的な」変容を促すものです。変容するには多少時間がかかると思われます。希望があればその辺りを細かく一緒に探ってゆきます。)

 

クライアント:そうですね。

 

カウンセラー:心が生き方の軌道修正を提案してきていると思うんです、今回のことは人間としてむしろ真っ当なことですよ。

(※ここで必要があれば、なんとなく仕事を続けてきたのはアタマの領域、過去の司書への希望や今回の仕事へのイヤな感じはココロの領域、と説明します。)

 

クライアント:そうですかー。

(※心身症状が心からのサインだと分かると、安心します。単にそのメカニズムがアタマで分かるだけでなく、サインを受け止めてもらえたココロの腑に落ちるからです。)

 

カウンセラー:では、会社に行くのがしんどいのをなんとかしましょう。仕事に意欲がないとすると、それに従えばどうか、、、。そうですね、仕事に距離をおくことはできます?例えばアルバイトとしてとらえるとか。

 

クライアント:え、意欲がないことに従う、ですか、、、。あ、でも、一旦冷静になって、今の感じを見直すということですね。アルバイトなんて、なんか肩の力が抜けた感じで、仕事の見方が変わります。

(※当面困っていることについて、今までの本人のスタンスとは別の観点で、しかし「すぐに実践可能」な方法を一緒に考えます。「肩に力が入った」生き方がご本人を苦しめていたこともうかがえます。)

 

※その後、短期的には、部署を変えてもらうように会社に交渉して、その部署で仕事を続けられているようです。

長期的、質的な変容という観点では、「楽になった」「部署を変えるように交渉する過程で強くなった」ということがあったようですが、「将来の場所を見つける」作業を続けられているようです。


2017年5月11日