少しだけ本質的な/深めのお話し−元型④

元型(archetype)と「エニアグラム」

「易経」と「セフィロート」が人間を含むこの世界全ての成り立ちを探ろうとするものなら、「エニアグラム」は人間に焦点を絞った思想です。

 

エニアグラムとは、人間には9つのタイプがあるという考えです。

 

エニアグラムは9なので、セフィロートの10と1つしか違わないですし、エニアグラムは中世イスラム世界で発展してきたので、当然旧約聖書の神話思想=セフィロートの流れのうえにあるものだとばかり私は思っていたのですが、エニアグラムは紀元1世紀頃にアフガニスタンで生まれた思想のようです。

そして、イスラム教が発展するうちに、アフガニスタンでエニアグラムの思想に遭遇し、それをイスラム世界に取り入れていったとされています。

 

易経は中国、セフィロートは中東、エニアグラムは西アジア、というように物理的な距離が遠くて交流が起こり得ない地域それぞれで、しかし同じような時代に、同じような思想(人間の本質を表す根源的な諸タイプ=元型)が形になっていったというのは、まさに人間には元型があるということ(そして、そのことを感じる直観と考えを体系化する理性が人間にはあること)の証明だと思われます。

 

さて、エニアグラムの9つのタイプは大きく3つの領域にくくられます。

本能メイン:タイプ8、9、1

感情メイン:タイプ2、3、4

思考メイン:タイプ5、6、7

 

人それぞれ生まれながらにメインのタイプをもっているのですが、エニアグラムの知恵は、組織における適材適所にこれを活用したり、個人の生活で自分のメインに偏り過ぎずに3つの領域を機会に応じてバランスをとり、思考・行動に生かす、といったものです。

 

私流に言うと、思考メインの人はアタマを使うのが得意で、従ってアタマ優位の人がなりやすいうつ病の素質を持ち易い。

本能メインの人は、ココロのなかの「生命力を感じる側面」につながっているので、生命体としては安定しているが、現代社会でそのままだと「人間」としてどうしても社会適応しづらい面もでてくる。

感情メインの人は、ココロのなかの「自分の存在意味を感じる側面」に素直にアクセスする素質があるが、これも本能メインの人同様、現代社会への適応で悩む面もでてくる。

 

だからこそ、エニアグラムはバランスということを言い、どこかに偏って抜け出せない人を導こうという知恵があるのだと思います。

私も、その人のそれまでの生き方と正反対の性質=全く違うタイプ、に意識を向けてもらうことで、ある時栓が抜けたようにその人がラクになる事例を目撃しています。

 

なによりも、社会という重しを取り払ってしまえば、それぞれの特徴はその人の持って生まれた唯一無二のオリジナリティです。

(現代では、それをある制度や都合から見て、例えば発達障害とか◯◯病と呼んだりしていますが。)

オリジナリティを窒息させることなく、むしろ大切に大きく育てる観点で社会も個人も関わるべきなのです。

 

2017年7月21日