うつ病の真実をリアルにかつ構造的に捉える試み③:億劫感について
うつ状態で典型的なものに「億劫(おっくう)」があります。
億劫はもともと仏教の用語で「おっこう」といいました。
劫はとてつもなく大きい数の意ですから、劫が億倍あるということになり、どうしようもなく膨大で手のつけられない煩わしさということになります。
うつ状態を説明するとき、一般的には抑うつ思考や意欲低下が挙げられますが、それらよりも現実には、実感として「億劫さ」が一番びったりくると感じられるクライアントが多いのです。
クライアントは、たいてい「〜するのが億劫でしようがない」という言い方をします。
また、話しを促すと「〜するのが億劫」の「〜」の部分は、かなり特定されることがほとんどです。
「会社に行くのがどうしようもなく億劫だ」
「満員電車に乗るのが億劫で、汗がでてきて息が出来なくなりそうだ」
「以前は通勤の時に新聞を読んでいたが、新聞を広げるのも億劫だ」
「上司や同僚と仕事の話をするのが億劫で、難しい案件の根回しを関係部署にするとか、飛び込み営業なんてとんでもない」
「会社で愛想笑いをするのが億劫で、嫌気がさす」
これらの訴え全てにうつの意味が隠されています。
掘り下げていくと、それは会社組織に属して決まった時間働くことへの無意識の抵抗だったり、人間関係をむりやりパーフェクトに良く保とうとしてきた無意識の徒労感だったり、会社が幸せを無条件に約束してくれるところでは全然ないことに無意識に気付きはじめていたり、電車で決められたレールを往復するだけのような今までの生き方を無意識に拒否しているetc、
人により様々です。
このことに(カウンセリング等をきっかけに)自ら気づいていけば、うつの症状は消失します。
つまり、うつの症状はやみくもではなく、風邪のような一般症状でもなく、その人特有の意味を持っているのです。
後から振り返ると、その人のそれまでの生き方の根幹に関係する部分に対し、狙ったようにうつの症状が現れているのが分かります。
したがって、精神の構造で言うと、それまでの生き方のベクトルに対し、180度逆行する=異議申し立てをするベクトルがいわばカウンターパンチとして出現している、そこで綱引きをしているのが、今までやってきたことにブレーキがかけられるが如く、気持ちが進まないのが億劫感として感じられるということになります。
2017年9月2日