心についてのメモ書き−技法の応用①

カウンセリングの技法を日常会話へ応用する①ーたかをくくらない

今回よりカウンセリングの細かい技法のなかで、日常生活に応用できそうなものを取り上げてみたいと思います。

 

人がずっと悩んでいたり考えたりしていた何かについて話している最中に、それを遮られると、その人は確実にその遮断に反発して、なお一層頑強に話し続けようとします。

 

その反発には「あ、この人は自分を話を聞く気がないんだ」と思ってがっかりする気持ち、つまり相手から自分への、したがってお互いの尊重の気持ちが存在しないことに、苛立っているわけです。

カウンセリングに限らず、話しをスタートした人を途中で遮らないことは初っ端の基本です。

 

相手の気持ちを尊重する意味合いとして、もうひとつ近い技法は「先回りをしない」ことです。

 

相手の話を遮るどころか「わかったわかった、それはつまり◯◯という意味でしょ」と言うことは、相手の悩みを自分は既に把握しているんだと言っていることになります。

しかし、悩みを話す人は常に自分の力で悩みの解決に辿り着くことを求めているものです。だから表面上は「うん、そういうことかもしれない、ありがとう」と言ったりしても、胸のうちでは実は白けているのです。

こうなると、実のある会話はもはやできないでしょう。

 

たかをくくらない」ことも同種の技法です。

子どもの話を聞いている最中に「はいはい、もうわかってるよ、どうせあなたは◯◯したいだけなんでしょ」と言うとき、この人は「どうせ」という言葉のなかに自分だけのアタマで決めた固定されてしまった意味付けを子どもに押し付けています。

 

なにゆえ固定してしまうのかというと、あらかじめ固定した意味を作っておいた方がその都度相手を観察しなくてよいので、面倒がなくて楽なのです。

自分はそういうことはしない、と思っていても、後から気づけば、相手を特定の色のメガネで見ていたことに気づくことは私自身たまにあることです。

 

しかし、人というものは自分だけでも日々変化しますし、まして家族や学校や会社のなかで生活していると、刻々と変化していきます。

ひと月前にカウンセリングに来られた方が、カウンセリングの内容とはほとんど関係ない自分だけの気づきで変化していることもざらにあります。

したがい、たかをくくることはそもそも自然な人間の変化に適応できない、陳腐なしがみつきなのです。

 

話を途中で遮る/先回りする/たかをくくる、いずれも相手の独自性・自発性を尊重しないで、会話・観察を放棄し、相互関係が成立しなくなってしまう原因です。

 

2017年12月5日