心についてのメモ書き−技法の応用③

カウンセリングの技法を日常会話へ応用する③ー転移を知る

先日ニュースで、中学校の教師が自分の生徒をSNS上で中傷する投稿をしたとの記事がありました。

これは、本来教師という役割の中で解決すべきストレスを、学校という場や教師という職業の枠をはみ出して、全く別の枠であるSNSで生徒に対しストレスをぶつけたものです。

 

これを「転移」といいます。

ある場での自分の体験をその場だけで処理できずに、別の場に移し替えて(=転移)処理しようという無意識の働きです。

 

これは、日常でもわりに見かける光景です。

知り合い同士で話をしている時、その場にいない人を話題にして、

「あの人って◯◯よねー?」と非難のまじった言葉をぶつけ、話しかけている相手の同意を得ようとする人を見かけることがあります。

おそらくは、その第三者に対する自分の鬱憤を当事者だけで解決できないために、場を移し替えて(転移)、いま話している相手の同意を得、少しでも気分を晴らしたいのでしょう。

 

しかし、当事者同士のゴタゴタを聞かされる方は、おうおうにして話し手の独善ぶりにうんざりしています。

その独善さは端的に言葉に表れています。

「◯◯よねー?」というセリフは、自分が◯◯と感じていることを無条件に相手が同意することを強制しているのです、あるいは「うんうん、わかるわかる」と言って欲しくて、相手に理不尽な依存をしているのです。

 

この言葉からもわかるように、転移をしてしまう話し手は、自分が思い感じていることを、相手(あるいは全く別の場)も同じように思い感じるんだと思い込んでいる、という基本構造をもっています。

 

別にカウンセリングの場等でもなければ、このような人には対しては、てきとうに相槌をうっておけばいいような気がします。

それでも、その人に「自分は転移してしまっている」と気づかせる可能性のある会話をあげておきます。

転移してくる相手の会話に辟易している人にも、ある程度効果があるかもしれません。

 

それには、会話のときにお互いの主語をきちんと使うことです。

「◯◯よねー?」と言ってきたら、

「△△さんは◯◯と思うのね、私は〜のように思う」

というように、お互いの感じ方は違う可能性があるということを、主語を立てることで明確に示していきます、話し手と聞き手を区別するわけです。

無自覚に転移をしてくる話し手の「みんな同じ感じ方をするものなんだ」という無意識のロープを切るために、言葉を通して、話し手に対し、自分と相手は違うんだという意識的な自覚を促すのです。

 

このような主語をたてる会話をすることで、聞き側も心理的な境界線をきっちり引くことができ、理不尽な依存等にも距離をおいて冷静に対処できるかと思います。

 

そして、お互いの感じ方が異なっていても、相手の考えを尊重する姿勢さえあれば会話は成立するし人間関係は壊れない、そう実感するようになるにつれて、転移を起こしていた人はストレスを無闇に開陳するそれまでのパターンから解放されていくのです。

 

2017年12月19日