心についてのメモ書き−技法の応用⑤

カウンセリングの技法を日常会話へ応用する⑤ーあいづち

あけましておめでとうございます、本年もよろしくお願い申し上げます。

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私は、サッカーを見るのが好きで、イングランドのプレミアリーグやドイツのブンデスリーガの試合をよくテレビで観ます。

 

実況や解説の人の話し方で気になる人はあまりいなのですが、どうしても気になる話し方の解説の人が一人います。

その人は、どうも一本調子と言いますか、ゴールが入ろうと、選手がどうしようもないミスをしようと、声の調子は変わらない、言葉の語尾もワンパターン、といった感じで、聞いているうちに飽きてきて、サッカーの醍醐味である意外性とか即興さに水をさされたような気分になってしまうのです。

(そんな時は、リモコンの音声ボタンを押して、バイリンガル(英語)に替えてしまいますが・・・)

 

たかがテレビのサッカー解説なのですが、試合の内容が良ければ良いほど、解説の非フレッシュさというか動きのなさと言いますか、そんなものが際立ってきて、どうも気になってきてしまいます。

 

ところで、これと同じようなことが、カウンセリングや仕事・学校での真剣な会話にも見出される気がします。

 

あいづちのことです。

 

話し手の話の内容もさることながら、話している時の表情や感情の高ぶり、あるいは聞き手が自分の話をどこまで分かっているか気にしている気持ち。

そんなことをリアルタイムで汲み取っていけば、聞き手のあいづちは自ずとバラエティ豊かになるはずです。

ただの「はい」を一本調子で繰り出すことは話を聞いていないこととたいして変わらないと言えます。

 

「はい〜〜」と押し出すように強く言って、目に力をこめるあいづちは、内容自体についての強い理解、

「ほっほ〜」と高めの声を出し、上方を仰ぐあいづちは、驚き・感心を素直に伝える、

聞き手は一見短い言葉、に付随してこのような声色・表情・姿勢というリアクションを付加することで、話し手に対して多くのメッセージをリアルタイムで伝えることが可能です。

話し手が、自分の言いたい内容や伝えたい感情を汲み取ってもらっているのだ!と感じれば、話はどんどん展開していきます。

 

ベテランのカウンセラーなどは、あいづちだけで相当程度のところまで、クライアントへの共感を果たし、その結果クライアントが早期に変容することも可能だと言われているぐらいです。

 

ですから、単なるあいづちと言うなかれ、人間関係の決め手となると言っていいくらい大切な「スキル」なのです。

 

サッカーに話を戻しますと、倉敷保雄さんという名物実況の人がいるのですが、この人の実況はゲームの内容に応じて、変幻自在です。

ゴールの奪い合いのゲームでは、シュートシーンに入れ込んで興奮した絶叫をしてくれて、観ている方も痛快ですし、覇気のないゲームでは、率直にそのことを指摘して、話題をチームの裏話にしたりしてダレた試合を笑い飛ばしたりもしてくれるのです。

 

真剣な会話にしろ、サッカーの試合にしろ、生の人間同士が一期一会で交わすかけがえのない時間です。

そして、そこでなされる言葉や感情の表現にしろ、素晴らしいパスやゴールにしろ、その人がその瞬間に存在して、変化して、何かに向けて生きていることなのですから、そのこと全部まるごとを味わって、そのフレッシュな美味しさをただちにお返ししないでは、お互いに生きる喜びが満たされないと思うのです。

 

2018年1月2日