心についてのメモ書き−アイデンティティと神話①

都市と共同体

前回、共同体で個人がアイデンティティを培うことについて少し触れました。

 

共同体の機能は、人同士の繋がり、儀式・風習等の伝統を日々身をもって経験し蓄積していくことで、そこで生活する人々自身の「内部」に頼れるもの=アイデンティティを作ることです。(2018年3月6日)

 

アイデンティティをひとりひとりに宿すことのできる共同体は、現代の日本でも地方に行けば散見できます。

地域住民が年に一度の祭りを楽しみにしていて、若い人もその祭りに合わせて帰省する所などは、人的結びつきによる情緒の育成、祭りを通しての土着の伝統文化・精神風土の醸成などがあります。

 

また、そういう文化を大切なこととしてきちんと認識し、代々守り続けてきた人達自体が大きな存在感をもっています。

そこで生まれた人は、そんな大きなものに抱えられて育ちながらも、そこにあるエッセンスを自分用にカスタマイズしながら自分の内部に取り込んで、外部に依存しない強い精神を持つようになります。

これがアイデンティティを形成するプロセスです。

 

そして、そういう共同体のエッセンスつまり共同体精神の核にあるもの、その共同体の祭りや伝統あるいは人的繋がりの基本コンセプトが神話とよばれるものです。

神話は、人間が内面の一番深い所に持つ、拠って立つべき人生観の源泉・骨組み・種子のようなものです。

 

しかしながら、都市に住んでいる人には、そのような昔ながらの共同体の生活はほとんど経験できないのが現実です。

 

したがい、現代の都市では個人個人が「共同体」や「神話」を見出す必要があると思います。

 

都市においても、共同体における風習や祭り・人的結びつき等と同じ性質・機能をもった色々な営み=神話のなかに自らを浸してたっぷりと神話の養分を吸い込み、それを種子として自分なりのアイデンティティを確立していく必要があります。

 

次回より現代の都市に生きる人達のアイデンティティや神話について色々と考えていきたいと思います。

 

2018年3月13日