心についてのメモ書き−AC①

子ども時代のトラウマ

最近ではAC(アダルト・チルドレン)ということばは一般的になったようです。

 

ACとは、「機能不全家族に育ち大人になった人」のことです。

名前の響きからすると、大人に成りきれない子どもっぽい人を連想しますが、そのようなファンタジーっぽい甘さ漂うものではありません。

 

思春期を経て成人した後にもなお、

・人間関係がうまくいかなくて悩む

・自分の意見や好き嫌いをはっきり周囲に伝えるのが苦手

・自分の気持ちを把握するのに時間がかかる

・常に神経が高ぶっている感じがして寝付きが悪い

・時々自分の体や感覚が遠い所にあるように感じるetc

 

このような状態になることがあり、なおかつ、

・子ども時代のつらい体験は成人するまで忘れていた

ということなら、ACである可能性があります。

 

その状態の根本原因はトラウマ(心的外傷)です。

ACと言われる精神症状は、PTSD=心的外傷後ストレス障害(トラウマを蒙ったことによって、後から出現してくる様々な心身症状)にほかなりません。

 

人は、直面することが非常に苦痛なことが起きた場合、自分を守るために、その記憶やそれに伴う感情の反応、すわちトラウマを素早くココロの奥深くしまいこんで、タッチできない=思い出せないようにします。

 

これを解離といいます。

 

表面的な現象としては、喉元過ぎれば熱さを忘れる、あるいは、臭いものにはフタをしろ、のような感じに似て、いっときは辛い感情を「なかったことにして」自らの生存に集中することができるのですが、トラウマは瞬間冷凍のような感じでカチンカチンにされている為に通常の記憶/感情の処理が施されていません。

 

通常は、ある大きな出来事がおこった場合、後になって事実を細部に至るまでつらつら思い出してみたり、はらわたが煮えくりかえるほど悔しくて怒りをどこかにぶつけたり泣いたりする、そしていつしか、あんなこともあったな、とか、あのことを思い出すと今でも胸のあたりがチクチクするけど、まあ自分の中では小さい思い出になったな、等と思うようになり、さらには、あんなことを背負い悩んでいた自分をふり返りふっと苦笑いをしてみたりする。

皆さんもしょっちゅう体験されている通り、通常は記憶やそれに伴う感情は、このような経過を辿って処理されていきます。

 

一方、未処理のままだと、冷凍されているとはいえ記憶と感情は忘れることもフタをしたままにしておくことはできません。

早晩解凍と処理を求めて浮上してくることになります。

 

解離自体は、自分を守るための緊急避難的なココロの働きなのですが、トラウマに伴うココロの傷や情操形成への犠牲は大きく、後々多岐にわたる苦しみの原因となってしまいます。

 

ではなぜトラウマができてしまったのか、というと、子ども時代、しかもかなり早期(0歳〜5歳頃)より、「その子どもにとって誤った」育てられ方をしたことに由来するケースがほとんどです。

 

誤った育て方と言っても、ほとんどの場合親は「良かれ」と思ってそういう育て方をするので、当然ながら悪気はありません。

また、親や本人あるいは同居する家族等になんらかのやむを得ない事情があって、親の意図に関わらず、子供が好ましくない環境におかれてしまうこともあります。

 

しかしながら、悪気がないゆえに、不可抗力により、そして家族という閉じられた環境ゆえに、その育て方は訂正されないままに長期間にわたり子どもに施され続けます。

それは、完全に無力な子どもにとっては、親の意図の如何・育児知識の欠如云々の理由に関わらず、結果的にはネグレクト(放棄・怠慢・過失)となり、子どものトラウマの原因となっていきます。

 

ACについて具体的な原因や症状、回復への道筋等を次回より書いていきます。

 

2018年5月8日