心についてのメモ書き−AC③

トラウマ感情浮上以前

*注意!辛い記憶を思い出しそうなら(再外傷を引き起こす可能性あるので)読むのを中止してください。

 

暴力等の虐待で生存本能(基本的な自己安全感覚など等)にダメージが生ずるほどの重度のケースについてはまたの機会に譲るとして、意図せざる親のネグレクトややむを得ない家族環境等によりトラウマができてしまった場合について、以降書いていきます。

日本で言われるACとは、暴力や意図的ネグレクトを伴わない家族環境のもとでの現象だという一般的了解があるかと思いますので。

 

子どもが親と一緒に居続けるには、過去のそして日々継続されているトラウマ記憶を解離するのはいわば「都合がいい」とも言えます。

生命体にとっては生存するのが最優先であり、またヒトから人間に成長して自我を確立するために、色々なことを親から学ぶことも同様に最優先事項です。

 

ですが、トラウマを受けたことに恨みを持ち(自我が未完成の幼児が養育者への恨みという感情をもつこと自体非現実的ですがこれは喩え話です)、親に批判的では学ぶことはできません。

 

まず親の真似をするのが動物の生存戦略であり、情動のやりとりを真似るのが社会的動物である人間の成長過程なのです。

解離すれば批判的にならなくてすみ、真似をすることに専念できるので「都合がよい」のです。

なんとも可哀想で、本人には罪はありませんが、自我を固めてゆくのが優先ですから、止むを得ない選択でもあります。

 

ここで、親子の間でそもそもなぜトラウマが出来て、それが苦しさの元となるのか?の理由を少し詳しく考えてみます。

 

暴力等による虐待のケースは明確だと思います。

動物としての根幹である生存本能への侵略・危険があったので、子どものトラウマとなります。

 

では、一見必ずしも侵襲的ではない養育なのに、情動部分にトラウマができてしまうのはなぜか?

 

親のパーソナリティややり方を△、子どものパーソナリティを◯とします。

これら自体は単なる形質の違い、パーソナリティの違いです。

 

ですが、子どもの受け取り方は違う可能性があります。

子どもはまず自分の◯よりも、親の△を優先して真似しようとします。

 

しかし、△でない◯の自分はだめなんだ価値がないんだ、と親が無意識のうちに子どもに思わせる・押し付ける、あるいは何かの拍子に子どもがそう受け取っているのに親が気づかない等の情動交流なら、それが苦しみ=自己否定のもととなると考えられます。

自分がもともと持っている基準を否定して、自分以外に基準を求める生き方の起源となってしまいます。

 

なんといっても、自分の外部を基準にすることは、人間として元来もっている「自分(の基準)で生きるのが心地良い」という正常な情動にとってはやはり侵襲であり、それをしたのが(結果的には)一番近しい自分を守ってくれるはずの存在の親だった、という感情記憶には耐え難いので、解離してトラウマとなり、苦しさの元になると考えられます。

基本的な人間への不信感につながってしまいます。

 

いずれにしろ、自我が固まりだすまでは必然的にトラウマは背後にかくれたままです。

 

しかし自我がだんだん確立しだしてくると、つまり思春期ころになると、トラウマ記憶は冷凍されたまま、主に身体症状だけまず浮上してきます。

 

その症状は、トラウマに由来する身体感覚の異常です。

大脳新皮質と脳幹をつなぐ辺縁系がダメージをうけているため、脳幹=カラダの感覚がなかば遮断されている状態がイメージできます。

大脳新皮質(理性)がそれらを「感じなく」「感じにくく」なっているような、解離と同様の風合いを感じます。

 

チック、不眠、だるさ。

離人感(自分が遠くにいるように感じる)、自己喪失感、孤独感、閉所恐怖、

などがあると思います。

本来の自分の喪失感がもたらす自分のココロやカラダからの遊離感、そこからくる不安ややり場のないイライラ感、などが原因です。

 

また辺縁系にある海馬等は、記憶→情動→味わいや嗅覚を含めた官能感覚(生きる喜び)、といったように生きる心地よさに精緻かつ連鎖的に結びついていますので、喜怒哀楽感情の乏しさや軽い摂食障害等もあり得ます。

 

海馬等は、免疫機能も司りますので、

体調を崩しやすい、風邪を引きやすい、インフルエンザや花粉症になりやすい等、免疫・体調調節機能の低下も起こり得ます。

 

話は少し戻りますが、外部の基準を学習するのは辺縁系(ココロ)でなく大脳新皮質(アタマ)です。

概して、周囲に合わせて・他人の批判に敏感で、大人しい子、迷惑をかけない子、勉強ができる優等生等がACには多くなります。

 

*子どものトラウマは、ADHD等発達障害と言われる状態にもつながるという説もありますがこれは別の機会に。

 

ですが、これはココロに対するアタマ優位、つまり神経症も併発している状態になっています。

 

次回は、成人後の状態について書きます。

 

2018年5月22日