精神症状の構造と回復(3)ー症状の深さ②

1.症状の深さ②ー自我親和的か違和的か(続)

自責感が自我親和的な人がそのままで「安心」かというと、当然ながらそんなことは全くありません。

心の奥が苦しいからこそ、医療・カウンセリング機関に来られます。

不安の度合いは自我違和的な人よりずっとしんどいものです。

 

そういう意味では、広義の自我違和感はあると言ってもいいのかもしれませんが、本人にとっては非常に漠然とした(これがまた苦しさの元なのですが)しかし強い不安としてしか認識されていません。

 

一方、自我違和的な場合は、自責感情だ等と明確に意識していなくても、自分の気持ちに「どこかおかしい」というある程度明白な感じを持っています。

そのような方に「いつ頃からそんな気持ちになりました?」と聞いて話を進めていくと、ある程度時期を特定できることが多いものです。

それゆえ、悩みのきっかけやその原因を特定しやすくなります。

 

自我違和的な人は、人生のそれほど早期ではない時期、10歳前〜思春期頃に身に付けた信条のようなものに支配されている場合が多いと私は感じます。

それは、ほとんどの自我親和的な人が幼児期の親子関係・生育環境(に関係する心的現実)に原因があるのに較べて、社会的な価値観を背景にした親子・家族関係や社会関係に原因がある割合が多いと思います。

(原因を特定しやすいということは、このような人生における時期の問題、すなわち心の強さ度合いや記憶能力等と関係していますが、それについては次回に書きます。)

 

例えば、男女問わず学歴至上指向、就職安定指向がありますし、女性ならばスリム体型指向、人と違うことを気にする指向、結婚出産への焦り指向等があります。

もちろん、これらの信条を自我親和的な人が身につける場合もあります。

 

自我違和感があるということは、回復に必須な自己観察が理屈上出来るということです。

クライアントが自分の中の違和部分をカウンセラーと一緒に観察・検討するのがカウンセリングの基本ですが、それを最初からすることができる。

そのような人は症状は重くないと言えますし、回復への時間もそれほどかからないでしょう。

 

尚、自我違和的な人で心・気持ちにはあまり違和感はないのに、特定の状況でのだるさや頭痛等身体に違和化がでてくる方もおられます。

うつの方に多い状態でもあります。

内科を受診してもなんでもないと診断されたりし、その分多少発見が遅れることもありますが、そのうち「どうもおかしい、身体的な病気とは違うようだ」と違和化を意識しだすと、回復への道を歩み出します。

 

また自我違和的でも解離した外傷をもつ人もおられます。

苦しいながらも違和化しているので、問題意識をもっており、それなりに回復は早いと思います。

 

但し、現実には、述べてきた症状は重い軽いにはっきり分けられるものでなく、人によりグラデーション的・モザイク的になっています。

 

2019年1月29日