精神症状の構造と回復(4)ー症状の深さ③

1.症状の深さ③ー安全基地と自我境界

さて、そもそも何故自我親和的あるいは違和的になるのか?という問題があります。

外傷が人生早期かどうかは何を意味するのか。

 

そこにはまず「安全基地」の強さ度合いがあります。

幼児が親との情動のやり取りから、自分がそのままで存在していいという安心感を得る、基本的な「自己感」を持つ。

 

このしっかりした自己感を安全基地と言ったりします。

他者に多少傷つけられても、自分に安全基地があれば、そこに戻り自分を再確認して安心できる。

この形成時期は人生の最早期、0〜4歳頃と言われています。

 

ここに問題があれば、精神構造の基礎部分に影響がでて、後に述べる投影や否認等の強い「防衛」を使わざるを得なくなります。

強い防衛は、無意識の奥深くから自分の感情や思考を支配します。

 

従い、人生の早期に強い支配力がある精神構造(もちろんこれは苦しみの元ですが)を持ってしまうことが、ある意味人生時間的に馴染みがある心理状態=自我親和的、という感覚になってきます。

 

やがて知能の発達とともに、安全基地を元にして理不尽なことにはノーと言えるようになる。

これが「自我境界」です。

これもかなり早期の形成(つまり親和的)、3〜5歳頃と言われます。

 

自我境界は人間が人間たる所以である、対人関係能力の要だと思います。

 

自我親和的な人は、極度に他者の顔色を伺う傾向があります。

それは、親との関係不全(という心的現実)に由来して自我境界が脆弱なためです。

 

自分がこのままでいていい安心感がない→それは自分が悪いからこういう状態なんだ→親の気に入られるように悪い自分を直さなくちゃ・・・その結果自分というものの軸(境界)をあいまいにせざるを得ず、親をはじめ容易に他者に迎合して従うようになります。

そんな弱い自我境界が大人になっても持ち越されると、常にビクビクして、自己主張を出来ず、社会生活に支障をきたすようになります。

 

カウンセリングが進むと、自我境界の形成が阻害された体験が感情のふるえと共に語られることがままありますが、その体験時の年齢は5歳前後です。

5歳くらい、という重要な目安が基本的な精神構造の育成にとっていかに大切かということの証拠かと思います。

 

一方、自我違和的な方は、安全基地も自我境界もある程度しっかりしている。

但し、幼児期より以降の時期、社会的なものに適応せざるを得ない事態に直面し、抑圧等のそれほど強くない「防衛」を使い、本当の自分の気持ちを押し殺します。

 

それでも、心の基盤は弱くなく、それほど強く支配を受けていないのです。

よって心の健康な部分も大きめに残っていますから、押し殺している側(身につけた信条等)を「なんだか(本来の自分と)違うな」と感じ、それが自我違和感となって感じられます。

 

かたや自我親和的な方は、本来の自分が少なめになってしまっているので、それだけ重症度・緊急度は高く、本来の自分からのSOSが大きな不安というサインなって衝き上げてきます。

 

2019年2月5日