精神症状の構造と回復(8)ー構造①

2.構造①ー防衛について

「防衛」とは精神分析の用語です。

ただ、一般の方が防衛と聞いただけだと、かなり硬いニュアンスを感じると思いますし、そのことが精神分析の世界に入り込みにくい一因とも思います。

 

私は、普段は防衛のことを「子どもの頃身につけた、やむを得ない生存戦略」と言っています。

「子どもの頃」と「やむを得ない」、この2つが防衛の考え方を表しています。

 

もう少し詳しく言えば、

「子どもが、自分が安全だと感じるために止むに止まれず習得した苦し紛れの心の生存戦略」が防衛で、

「それが大人になっても持ち越されている状態」が精神症状の元です。

 

「あつものに懲りてなますを吹く」。

熱い食べものに口をつけてやけどをした、それ以来どんな食べものでも、たとえなますのような冷たい酢の物でも、ふーふー吹いてから食べるようになった。

これが防衛と精神症状の関係をよく例えています。

 

熱いものを食べてやけどした時(子供時代)は、たしかに辛い思いをし、なので自分の安全を守る(防衛)ために、どんなものでも用心してふーふー吹くのは、その時点では子供なりの止むに止まれない合理的な方法だった。

しかし、成長しても、色々な食べ物=色々な現実に目を向けることが出来ず、何に対しても同じ思考・行動パターンを繰り返すうちに、現実との齟齬が出てきて苦しみの元となってしまいます。

 

「子どもの頃」の方法を時間が経っても引きずること、暫定的な「やむを得ない」方法を大人になっても無意識ゆえに変えがたいこと、この時間性と非合理性がポイントです。

 

そして、防衛が習得される過程もそれがパターンとなって使用されるのも無意識に行われる、ということが最大の特徴です。

 

至極当たり前のことですが、自分で防衛を用いていることに気がつかない(=無意識)からこそ、大人に持ち越す可能性がでてくる。

おとなになって、「どこかへんだぞ」あるいは「なんか不安がいつもあるな」という感覚はあるのに、雲をつかむような感じで、自分では原因が分からない(=無意識)。

それだからこそ、無意識を扱うカウンセリング技術が必要となってきます。

 

「構造」の本論に入る前に、次回よりいくつかの種類の防衛を挙げておきたいと思います。

なんと言っても、防衛のメカニズムを知ることは、精神症状の構造を把握するうえで要の考え方です。

 

次回は最も基本的な防衛「抑圧」等について、書いていきます。

 

2019年3月5日