精神症状の構造と回復(15)ー構造⑧

2.構造⑧ー精神症状に共通の特徴(自己中心的)

うつ病、強迫性障害、パニック障害、対人恐怖症やアダルトチルドレン、パーソナリティ障害等、精神症状には色々なものがありますが、それらにはいくつかの共通する特徴があります。

今回から数回、その特徴つまり精神構造の大枠とも言うべき要因を書いていきます。

 

精神症状を持つ方の最たる特徴は、自己中心的な思考・感情ということです。

これは、いわゆる「自己チュー」とは違います。

私達が「自己チュー」と言う時、それは他人の目に見える振る舞いが自分勝手な人のことを言い、その人の内面には踏み込んでいません。

 

一方、精神症状でいう自己中心的な構造とは、自分の安全を守る為の思考や感情=防衛に専心するあまり、現実に目が向かなくなっていることを指します。

要はその人の内面自体がどうなっているかということが問題となってきます。

 

人間にとって現実とはつまるところ他者との人間関係です。

 

ですが、例えば本当の自分の気持ちを主張しない=抑圧の防衛を用いる人は、本当の自分の感情を表現することがないので人間関係においてもストレスがたまるばかりですし、人を怖れる気持ちを投影している人は、他人が自分をどう思っているかばかりが気になって、良好な人間関係を築くのが困難でしょう。

 

しかし、人間関係でのストレスや困難にも関わらず、抑圧や投影が原因だとは気づかず、重いうつ状態や人間関係の破綻を迎えるまで、それらの防衛に固執する場合も多くなります。

それは、その人にとって(主に子ども時代に身に付けた)防衛は、自分自身の生命と同等の価値を持っている(と本人が無意識に思い込んでいる)からなのです。

 

子どもは無力です。

そんな弱い人間が、弱いなりに必死に身につけたもの(=止むに止まれず習得した生存戦略)が防衛なので、それを捨て去ることは生き抜く術を放棄することに等しいのです。

 

防衛の放棄は死の恐怖に直結するので、手放すことは難しい。

防衛の獲得が無意識に行われたこと、それくらい本能に近い=無意識のレベルで行われたのも人間というより生物としては生存のための合理的な反応なのですが、無意識ゆえ当人にとっては気づかない。

 

ですから、精神症状というものは、傍目には「この人は、なんでそんなことを思うんだろう?」というものばかりですが、本人にしてみれば無意識とはいえ必死になって自分を保ってきた方法なのです。

その方法は、自らのいのちを守るための唯一絶対的なものですから、人間関係や他人の気持ちよりは優先されます。

 

例えば「依存」という状態ひとつとっても、ひとたび仲良くなると相手の都合や気持ちを考えることが出来ず、ひっきりなしに連絡したりするのは自己中心的な精神構造と言っていいでしょう。

そこには無意識とはいえ、その人にとっては依存することが決定的に重要と思い込んでいるので、相手のことを考えるよりも相手のことを利用する=利用せざるを得ないくらい、自分のことしか考えられないという、まことに苦しい心理が働いています。

 

そういう意味において自己中心的ということになってくるのです。

 

2019年4月23日