精神症状の構造と回復(17)ー構造⑩

2.構造⑩ー精神症状に共通の特徴(幻想的)

自明のことではありますが、幻想的な気分に支配されていることが精神症状の特徴です。

現実よりも幻想に、自分が固執するファンタジーに囚われているのです。

 

「自分は公務員になんとか滑り込んだ、民間の終身雇用が崩壊した現在、この安定したポジションを失わず、失敗のないように、周囲からダメ出しをされないようにやっていかねばならない。」

 

あるいは、

 

「20代で結婚して、子どもをもうけて、ママ友ともちゃんと付き合って、子供にお受験させて苦労のない人生を準備してやって、旦那の面倒もしっかりみて、なおかつ自分もいつまでも若く美しい女性像を保っていたい、そういう人生こそ女の幸せなんだ。」

 

どこか自分だけの世界にしがみついている雰囲気がないでしょうか。

 

しかしながら、このような生き方が現実にスムーズに進むとは思えません。

 

失敗しない仕事は存在しませんし、周囲の誰一人からも嫌われないようにすることは、現実として不可能です。

また、旦那や子どももひとりの人間ですから、受験や世話をどう思うかは相手次第です。

 

要は、自分の生命、幸せと同等の価値を持つと本人が思い込んでいる生き方に、現実を無視して固執しているのです。

 

そこには何らかの防衛、例えば安定した収入のない人生は絶望的だというような雰囲気の家庭で育ち、それを「取り入れ」、本来の自分を「抑圧」したのかもしれません。

 

また、女性として過酷な人生を送っているように見える母親を間近にして育ち、その母親との関係も空疎だった場合「幸せな女性像」を「引きこもり」的に夢見ていて、今もそれを頑なに守っているのかもしれません。

 

しかし、いつかは必ず現実との齟齬は起こってきて、必然的に幻想は破綻せざるを得ない運命です。

その時になって、周囲や医療・カウンセリングに助けを求めることになってきます。

 

2019年5月7日