精神症状の構造と回復(18)ー構造⑪

2.構造⑪ー精神症状に共通の特徴(自分がない)

これもまた自明のことですが、防衛を用いているがゆえに「自分がない」ことが挙げられます。

(病的な)防衛とは止むに止まれずとった方法なので、本当はそれがない方がいいわけです。

もしくは一度習得しても、周囲の影響でそれを弱めていく、なくしていく方向にいけば幸運であります。

 

でも、不幸にも、防衛に頼らざるを得ない場合もあります。

不快な気持ちを奥深く押し込めたり(抑圧)、不安でどうしようも出来ない気持ちを他者に投げ出したり(投影)、自分だけのファンタジーに耽溺したり(引きこもり)。

 

ですが、これら(病的な)防衛がある状態は全て、自分の気持ちを認めていない、受け容れていない、現実から逃避している状態です。

 

その証拠にと言うべきですが、

「自分がない」

「自分の気持ちが分からない」

ということを多くのクライアントが仰ります。

 

防衛というからくりに気づいていないにしても、自分がないという根本的な苦しさには気づいているのです。

これは精神症状が自我に親和的か違和的かに関わらず共通のことです。

 

そして、ここで決定的に重要なのは、「何が」自分がないことに気づいているのか?ということです。

 

「本当の自己」「偽の自己」という言い方をします。

偽の自己とは、病的防衛を用いる自分です。

本当の自己とは、防衛に覆い隠されてはいるけれど自分本来の資質を持った自己です。

これが精神症状の基本構造です。

 

そして、「自分がない」ことに、本当の自己の側が気づいているのです、声を上げ始めているのです。

 

その「声」とは、「どうもおかしいな」という漠然とした感覚の時もありますし、「自分の一部が壊された」(=防衛により侵された)という心の傷と言うべき情緒的感覚の場合もあります。

また、その傷が身体化された異常感(頭痛、内臓の異常等)となって表現されることもあります。

 

なによりも、どこか自分が空っぽな感覚、毎日生きていても砂を噛むような味気ない感じ等があります。

 

ということは、もともと生まれた時から、本当の自分が確実に存在し、それは自分にとっての少なくとも健全な状態=防衛に囚われない状態を知っているし、それを常に求めている。

また、本来満たされた味わい豊かな存在ゆえに、空っぽな味気ない今の生き方に不快感を示している。

 

だから、健全でない今の状態に色々な形でメッセージを送ってくる、と考えられるのです。

このことに目をとめること自体が大きな気づきへの第一歩と言えます。

なぜなら、今まで見えていなかった自らの精神構造を自ら把握すること=自己観察がスタートするからです。

 

*「2.構造」の章は今回で終わりです。次回は「外向か内向か」等人間のパーソナリティについて書いていきます。

 

2019年5月14日