精神症状の構造と回復(24)ー回復へ向けて①

4.回復へ向けて①ー基本設定(治療契約)

これまで書いてきたことは、もちろんクライアントの精神症状回復のため、もしくは新たな地平に向けての自己実現のため、の準備に過ぎません。

 

今回からは、実際のカウンセリング現場での手順に沿ったかたちで、これまで述べてきたことを折り込みつつ、回復のための姿勢や方法を書いていきます。

 

さて、人が、苦境から立ち直る、障害を乗り越えて変容する為には、その人自身のモチベーションと目的がなんといっても絶対的に決定的に重要です。

つまるところ、人の心を他者はある程度理解は出来るけれども、心を動かすことが出来るのは自分だけなのです。

 

馬を水飲み場に連れてゆくことは出来るけれど、水を飲ませることは出来ない、ということです。

 

ですから、初回面談時に、あるいは進捗がみられた時に、カウンセリングの動機や目的を必ず確認します。

お会いする前、お申し込みの時点で「◯◯のことで悩んでいる」と書いて頂く方は、それだけで目的が明確だということが推測できます。

 

あるいは「ホームページを見て、自分のことが書いてあるような気がした」と冒頭に仰る方なども、自分の悩みにマッチするカウンセリング機関を一生懸命探してこられたんだな、とモチベーションの高さが分かります。

もちろん、お話し頂く過程で、目的等がだんだん明確になってくることもあります。

 

そのような方と初回に概略のお話をお聞きした後、お悩みのポイントはこれとこれでいいですね、その解決に向けてカウンセリングを進める、頻度はこうする、料金はいくら、というようにお互いに確認し決めていきます。

 

治療契約(カウンセリング契約)です。

 

当たり前のようですが、この契約が明確でないと、クライアントのモチベーションが尊重されませんし、したがってそれが十分活かされません。

 

決して安くないお金もかかるし、わざわざ足を運んで来なくてはいけないし、自分のことをある意味さらけ出す必要があるので、カウンセラーと目的を共有できているんだというしっかりした基盤が不可欠です。

それがあってはじめて、モチベーションが回復への推進力となるのです。

 

ときどき、どこか良さそうな所に行って、なにかのプログラムに沿って何回かカウンセリングを受けさえすれば、良くなるんだ、と思っている方がいます。

 

そのような、内発的(=モチベーション)なことを抑圧し外部に頼る思考自体が精神症状に特徴的な幻想傾向ではありますが、そんな方とは、自らの悩みを自分で話していき、共同で検討してゆくことがカウンセリングの基本であること、人はそれぞれ違うので必ずよくなるやり方は存在しないこと等をお伝えします。

それで納得頂ければ、その方のモチベーションと目的を確認し、改めて治療契約をするかどうか話し合っていきます。

 

2019年7月9日