精神症状の構造と回復(26)ー回復へ向けて③

4.回復へ向けて③ー基本設定(自由連想)

カウンセリングの初回で冒頭に必ずお伝えすることがあります。

 

「話の順番など気にしないで、心のままに話してください。(私の頭を指して)こっちより(胸を指して)こっちの方が自分を知っていますから。」

だいたい、こんなことを言います。

 

相手が緊張していそうな時は「(深呼吸して息を吐き出し)ハァーという感じで(椅子にふにゃりと体を預けて)思い切り力を抜いちゃってください」と言います。

身体は心と深くつながっているからです。

 

なぜ、心(≒身体)に主導権を持たせるようにガイドをするかというと、それは「自由連想」をしていくためです。

自由連想とは、フロイトが創始した精神分析においてクライアントに要請される唯一の方法・ルールです。

 

相談に来られる方は、多かれ少なかれ頭でっかちになっていることがほとんどです。

この場合、頭でっかちな状態とは、要は病的な防衛に囚われている状態です。

ですから、防衛に覆われていない部分を起動する準備作業が必要です。

 

自由連想は問診と違い、思いのままに話すという点でクライアントに主導権・主体性があります。

問診では、基本は医師等の主導のもと一問一答であり、患者は受け身の立場です。

「治してもらう」的な思考になりやすいといえます。

 

また、自由連想は論理的な「説明」をクライアントに要請しません。

一方、自分の症状を正確に相手に分かってもらわねば、とクライアントに思わせるような場であれば、辛い心を無視し、がんばって質問に答えようとしたりし、でもそれが出来ず余計に自尊心が傷ついてしまったりする方もいます。

その点自由連想は、回答や説明を強制しませんから、「安全」で、心の理にかなった方法でもあります。

 

もちろん、自由連想でもセッションの回数を重ねていけば、カウンセラーが介入し対話の様相を呈する場合も多くなりますが、主導権をカウンセラーがとることはありません。

先日書いたモチベーションとも大いに関連するからです。

 

ゆったり思念のままに連想をしていると、一問一答ではとうてい出てこないような深い感情が口をついて出てくることもありますし、その感情にそのまま沿っていると、忘れていたエピソードが甦ってくることもあります。

これらは全て大事な手がかりとして、今後のセッションに活かされてゆくことになります。

 

クライアント自身が、セッションを終えた後もその連想を続けて、大きな気づきにいたることもあります。

自由連想に触発されて自己治癒力が発動したと言うことができます。

 

他にもあるような気がしますが、だいたいこのような理由から、自由連想に従うことにはメリットがあるのです。

 

2019年7月30日