精神症状の構造と回復(27)ー回復へ向けて④

4.回復へ向けて④ー基本設定(カウンセリングと日常生活)

カウンセリングがはじめて、という方ももちろんおられますので、初回にカウンセリングというのはこんな感じのものです、という説明を簡単にします。

 

「カウンセリングをすると、疑問や新たな視点などが湧いてくると思います。そんな気持ちを日常生活の中で反芻したり、実際の出来事に関しても新たな視点でみようとしたりすると、また新たな疑問が出てきたり、あれっそう言えばあんなことがあったなと思いだしたりするかもしれません。そういうことを次のカウンセリングで我々が検討することで、また新しい気付きとか悩みについて精度を上げた理解に至ることが可能です。それを繰り返していきます。」

 

だいたい、こんなことをお伝えします。

これは、言ってみれば当たり前のことに見えます。

カウンセリングの時間よりクライアントの日常生活の時間の方が圧倒的に長いのですから。

 

但し、上記の説明はクライアントにそれとなく「宿題」を出しているという見方もできます。

あるいは、対話の成果を有効活用しましょう、という意味も含んでいます。

 

もっと言えば、日常生活=現実がメインで、カウンセリングはその方が自分なりの現実への折り合い方を見出すのをサポートするサブ・伴走の役割なんです、ということです。

 

おうおうにして、現実社会・現実生活に「挫折・敗北感」あるいは「逃避傾向」を抱えてカウンセリングに来られる方も多いものです。

 

そんな方とカウンセラーが、従来の防衛的な姿勢に不合理さを見つけたり、その方本来の自己を再発見したりして、再度、但し従来とは違う視点で日常の出来事に向き合う体験ーそれは初めはこわい体験でもありますがーをクライアントが身を持って経験してゆく、つまり自分に自分で向き合うのが広い意味でのカウンセリング体験です。

 

このように日常生活にも軸足を置いてカウンセリングを進めることで、クライアントの心が良い意味で撹拌されて、カウンセリングの材料がたくさん集まったり、場合によってはクライアントが一歩を踏み出すことで本人の立ち直る機会が(カウンセリングというよりも)日常活動からやって来ることもあるのです。

 

2019年8月6日