4.回復へ向けて⑦ーカウンセラーの仕事(見立て)
基本設定次いで導入と同時期に、カウンセラー側の作業として「見立て」をすることが挙げられます。
これは、クライアントから当初は見えない範囲です。
セッションの一回目〜数回目、場合によってはもっと多い回数を重ねて、これまで書いてきたこと=症状が親和的か違和的か、どんな防衛を用いているか、タイプはどうか、を推測していきます。
見立て、は診断と言ってもよいかもしれませんが、現状の多くの医療機関による診断とは、DSMという診断マニュアルに照らし合わせるだけの、患者のその時点の状態だけに焦点をあてたものです。
一方、カウンセリングにおける見立てとは、自由連想によって語られるクライアントの個人史を聴いていくことで、その方特有の傷つきやこだわり、防衛、防衛を用いる以前の本来の資質等をでき得る限り具体的かつイメージ豊かにカウンセラーが描き出してゆくことです。
心象風景という言葉があって、これは心的現実と同義語と思って頂ければよいのですが、クライアントひとりひとりの感情や気持ちの軌跡=心象風景の歴史は本当に全く違い、マニュアルでカテゴライズできるものではとうていありません。
防衛やタイプという概念も実はクライアントの心象風景を理解しやすくする為のツールに過ぎません。
見立てとは常に更新されるもので、精度が上がってゆきますし、回数を重ねるうちにカウンセラーの側に全体像が描き出されてきます。
ただし、依然その全体像は不完全です、他者を完全にトレースして体験することなど不可能なのですから。
河合隼雄は「カウンセラーは「分からないことで勝負する」」と言いました。
全体像を把握したとカウンセラーが思い上がって満足するよりも、まだここが分からないしっくりこない、というポイントを早めに見出して、セッションでそれとなくそこを探求する。
すると、カウンセラーが思ってもみなかった心象風景がクライアントから語られることは稀ではありません。
そのような所は往々にして、クライアントの精神構造の核心をついた、回復するための肝の部分だった、ことがあるものです。
2019年9月20日