精神症状の構造と回復(33)ー回復へ向けて⑨

4.回復へ向けて⑨ー共同作業(解釈)

解釈は、他者をモノとして冷たくさばいてる感じで、あまり語感がよろしくないのですが、他に用語もなく、やむを得ないのでこれを使います。

ちなみに、クライアントに対し「解釈」と言うことはありません。

 

今までのセッションでみてきたクライアントの人生のストーリーをふまえ、幼少期の防衛的な思考や気持ちが、いかに現在の思考や感情にも表れているかを話し合っていく、これが解釈です。

 

リフレーミングは、防衛的認識の枠だけに焦点をあてている感じがあります。

現実生活に即効性を期待する面が強いです。

 

一方、解釈は、防衛を用いざるを得なかったいままでの人生を含めて、今の自分の防衛的思い込み、そこから来る苦しさの因果等、そんなことに気づいていく、根本的な理解という意味合いがあります。

また、過去の自分の傷つきや孤独感、悲しみ等をなぞりつつ、それらの感情から離れてゆく、あるいは受容してゆく情動的な意味もあります。

 

「昔の、母親から問答無用で急き立てられる感じ、それに対して早くやらなきゃ的な思考が、今もなお基本的な構えになってるとは思いませんか?」

「あ、それはたしかにそう思います・・あ、思い出した、こんなことがあったな・・・」

というように対話していきます。

 

おうおうにして長い時間を要する作業です。

人はそれぞれ、それなりの理由、愛憎等アンビバレントで複雑な感情があって、現在の精神構造をかたちづくっています。

はいそうですか、とぱっと理解できるものではありません。

 

氷が溶けてその下にあるものが現れるには、その人なりの「時」があるものです

そういう人生時間にも思いをはせながら、要所要所で解釈、およびその微修正を重ねてゆく。

 

本人は当たり前と思っていた防衛をセッションの場で的確にタイムリーに解釈することも必要です。

「○○の状況では必ず○○とするいう行動にも、ある種の構えがあらわれてません?」

「あ、そうですね、そこは言われないと気づかなかった」

 

あるいは「実はうすうす気づいてはいたんですが、見るのがこわくて放っておいたのかもしれません」、こんな応答があれば、放っておいたもの=深い根本の傷つき・不安、への探求も始まります。

 

そして、ついに、「ああ、いままで自分は何という生き方をしていたのだろう!」という大きな感情を伴う、自分が人生の主体なんだ!というような気づきが徐々に、あるいは一気に起こります。

防衛的思い込み、自分を苦しめていた強迫性や幻想性等に気づき、過去の苦悩の理由が腑に落ちてゆきます。

 

2019年10月8日