精神症状の構造と回復(34)ー回復へ向けて⑩

4.回復へ向けて⑩ー共同作業(直面化)

「直面化」も語感がよろしくありません。

むりやり辛いことに向かわせる、というニュアンスを感じ取れそうな気がします。

この言葉もクライアントに言うことはありません。

 

直面化とは、自らの防衛に「直面」する、辛いというより、はっとさせられる経験です。

ある意味避けては通れない道です。

現実に向き合うのを巧妙に避けていることが防衛でもあるので、そういう方法をとってきた自分に気づくことが必要となります。

 

クライアント自身に気づきを促す「解釈」では気付きづらいクライアント、つまり防衛が自我親和的で、思い込みが強いクライアントに効果的なように思います。

 

どんな時にこれを行うかというと、「今ここ」です。

カウンセリングの場におけるクライアントとカウンセラーのやりとりそのものを、その瞬間を逃さず捉えて的確に言います。

 

例えば、カウンセラーは「もしかして私に拒否されるんじゃないかという気持ちを今持ってます?」

するとおうおうにして、クライアントは少し驚いた表情で「実はそうです」。

 

転移という現象があります。

対人関係における強い思い込みを、カウンセラーを含めて自分と関わりを持つようになってきた他者に抱く心理です。

 

例えば、不信感・嫌われるんじゃないか・どうせだめだわかりゃしないんだ等の気持ちを持ってしまうことです。

もちろんこれらは、幼少期に身につけた心理が大人になっても続いている、つまり防衛的思い込みです

 

今までの対話を踏まえて、クライアントの精神構造を見極め、カウンセラーへの転移を察知した時、すかさずそこに言及します。

 

続けて、

カウンセラー「私を含めて相手と少し近づくと、そんな気持ちを抱くのですね?そこを話したいですね」

クライアント「あ、ちょっと関係が深くなると誰に対しても、なんて・・たしかに。それはもしかすると、私だけなのかな」

 

すると、クライアントは「ツボをつかれた感」と言いますか、視野狭窄の虚をつかれた感と言いますか、ある意味肩の力が抜ける感じになることもあります。

「自分のことをわかってくれそうだ」という思いが、張り詰めていた緊張感を緩和させるかもしれません。

 

そうなると感情が動いてくる感じになってきます。

大きな転換点です。

 

また、「私だけなのかな」と思うことは、自分で自分の思い込みを見つめ直すきっかけが生まれることです。

要は自我違和化が始まるということです。

 

そうなると、違和化された防衛やその元にある感情について、クライアントとカウンセラーが連帯して解明してゆく体制が整ったことになります。

その後は「解釈」を進めていきます。

 

2019年10月18日