精神症状の構造と回復(38)ー回復へ向けて⑭

4.回復へ向けて⑭ー精神構造の全体像

さて、そろそろこのシリーズも佳境に入ってきました。

 

そこで、ここまで書いてきたことを整理する意味で、「三層構造」のことを述べます。

三層構造とは、私の先生の先生近藤章久氏が提唱したものです。

 

一層目は、思考・知識・情報など理性の層、

二層目は、感情・気持ち・感覚など情動の層、

三層目は、直観・個性・創造性など仏性(ぶっしょう)の層、です。

 

まず、二層目に着目します。

 

親との関係で子供が不安になり、その不安を見ないように、あるいは感じないようにする為の方策が防衛ですが、そもそもそのきっかけとなる不安感情はこの二層目にあります。

人生の早期で不安喚起の要因があり、したがいその不安が強ければ、強度の防衛を使用すること(自我親和的)は以前述べた通りです。

 

従いまして、カウンセリングではこの二層目、いわば置き去りにされたままの感情ー悲しみ・怒り・寂しさ等の感情にクライアントがタッチできるようになることをまずは援助します。

 

以前にも若干触れましたが、親への・親からの愛を渇望したが、それが様々な理由で妨げられたことが防衛を使わざるをえないことにつながっています。

 

ですから、まさに愛憎というアンビバレンスがあるゆえのいまの苦しさなんだ、ということにカウンセラーは共感していきます。

「解釈」の真の意味はここにあると言えます。

 

また、抑圧された不安を意識化し「葛藤」できるようになることは悪くない、とお伝えするのも根っこの意図はアンビバレンスさへ目を向けることにあります。

 

一層目は、学校や職場など通常の生活でもっぱら私達が居る世界です。

そこでは、自分の「外」の世界に対し、思考をめぐらし、情報を得ようと注意を向けています。

 

ですが、カウンセリングの場においては自分の「内」に向ける、つまり二層目を感じとり言語化するために使われます。

 

そこがスムーズにいくように、モチベーションがありながらも、リラックスできて、秘密がもれる心配がない治療契約・環境設定をします。

そして、「話す順序を気にすることなくを心のままに話してください」という自由連想は、一層目が二層目にタッチするためのものなのです。

 

ちなみに、たいがいのクライアントが自分の生活の中で気づきに至るきっかけとなる「自己観察」も、一層目が二層目を感じ取る仕組みにおいて全く同じです。。

 

2019年11月26日