精神症状の構造と回復(39)ー回復へ向けて⑮

4.回復へ向けて⑮ー精神構造の全体像(続)

一層目も重要です。

人間は、三層全てが活用されて十全に生きることができます。

 

「リフレーミング」は主に一層目で働いているように思います。

外界への認識・認知の枠組みを変えることが比較的容易にできる人が多いのは、感情という二層目にあまり関係なく、脳で言えば私達が普段使い慣れている表層の大脳新皮質を使用しているからだと思います。

 

また、一層目では心理教育が効果を発揮します。

人はそれぞれが個性のかたまりですから、知識からアプローチした方がしっくりくるという人もいるのです。

たまに私がその人に合うと思われる書籍をすすめるのも同じ理由です。

 

さて、三層目です。

唐突に「仏性」という言葉を出しましたが、今のところ他に最適な言葉が見つかりません。

 

「本来の自己」と言うことは出来るのですが、「偽の自己」と対比して使われることが多く、若干避けた感じです、というのも本来の自己以上のものがそこにある気がしているからです。

 

カウンセリングでは、一層目を駆使し二層目にタッチして、埋もれていた感情を汲み防衛を減じていく、すると本来の自分に気づく瞬間が訪れる。

従来の強迫的でない、ナチュラルな自発性が湧いてくる。

言い換えると、一層目および二層目の病的な部分つまり偽の自己が減って、三層目という本来の自己が立ち上がってくる。

 

但し、その三層目が現出する時にはなんらかのかたちで、自然や宇宙とのつながりや一体感をクライアントは感じているようなのです。

 

樹木のさざめきや夜空の星等のなかにふと自分を発見して、沸き起こる静かな感動を感じ、「ああ、自分が変わった」という感触を持つようになります。

自然や宇宙という、理屈(一層目)抜きの存在で、おのれの執着(二層目)が小さくみえるすごく大きな存在。

 

いまやその存在のなかに入ってしまい、そこで自分を感じるというのは仏性の体験と言ってもいいのではないでしょうか。

これこそが真の幸福に至るために古来から宗教や神話が存在する理由と同じ体験群と言ってもいいのではないでしょうか。

 

思えば、内向か外向かのその人のタイプも三層目が発端のように感じます。

いいも悪いもない、その人がもともと持っている個性が根っこにあると思います。

 

人生のなかでそれが防衛的に使われる時期があるにしろ、よく見てみればその奥にはその人の仏性が常に潜んでいて、本来の自分という根をいつも持ち続けているのではないでしょうか。

 

2019年12月5日