精神症状の構造と回復(42)ー回復へ向けて⑱

4.回復へ向けて⑱ーセルフワーク(いじらない)

新年明けましておめでとうございます。

 

さて、とうとうこのシリーズも今回で最終回です。

 

気にしなきゃいいんだ、

忘れよう、

気持ちを切り替えよう、

ポジティブシンキングをやってみよう、

 

こんなことを言う方はわりと多いです。

 

不安な気持ちはたしかにイヤなものですから、不安に近づきたくない、不安を見たくない、と言いたい気持ちは分かる気はします。

なにかの方法をやってみれば、もしかしたらうまくいって、不安も消えるのじゃないか、とハウツー本やツールにすがる気持ちも分からないではありません。

 

しかし、こと今まで書いてきたような精神構造が不安の原因なら、そういうやり方はまず効果を上げません。

それは、そういうやり方=気にしない・気持ちを切り替えるは、防衛をしていることと同じだからです。

 

蓋をして見ないようにするのは「抑圧」ですし、ポジティブシンキングは目をそむけ行動することで苦しさをまぎらわす「否認」です。

(「不安は人を行動に駆り立てる」とはよく言ったものです、が、ちょっとこらえ性がないのではとも思います。)

 

そんなやり方を「いじる」と私は呼び、不安になっても「いじらない」でそのまま「流れるまま」にしておくことをやってみてほしいと言います。

これは、禅の修行で座禅を組む時の心得と同じものです。

 

禅では、雑念つまり不安や心配から座禅の最中にその対策を考えたくなっても=「いじり」たくなっても、その雑念があたまの中を流れていくことをただ見つめろ、と言われます。

そのうち、いじりたい、という欲求は薄れてくる、とされています。

 

概ね賛成です。

 

不安から逃げていると不安は正体不明のままで恐ろしい。

しかし、いじりたくなる自分をも自分で観察していると、いじりたくなるパターンが見えてきて、把握可能な感じになってくる。

あるいは、不安と共に居れば、不安の底が知れてくる感じになってくる。

 

精神は一度不安を抱えることが出来れば、不安に徐々に慣れてきて、やみくもに不安を恐れなくなります。

 

そもそも不安との付き合い方を逃げるとかへんに克服する、ことしか知らない人が多いと思います。

子供時代は恐怖や不安も大きかったので、それはやむを得なかったと思いますが、今や目先を変える時期にきています。

 

「うつをやってみてください」とうつの方に言うと、本人にしてみれば意外にも心が安定してくるのも、その好例だと思います。

 

2020年1月3日