「グッドマザー」と「バッドマザー」⑤

「グッドマザー」を作り上げる

さて、「バッドマザー」の一方、「グッドマザー」というこれもまたまとまった感覚群が形成されます。

この感覚群の特徴は子供の願望や理想化が多分に入っていることです。

 

子供は「バッドマザー」と常に共に暮らしている、という厳しい現実に耐えることはできないようです。

 

もちろん、実態としては、ズレを子供に感じさせる母と子供を懸命によかれと思って育てる母は、同一人物ではあります。

 

ですが、心理において、自分を不安にさせる「バッドマザー」と共に居ては、子供は安心することはできないのです。

 

なので、完全に安心できる子供なりの「グッドマザー」を「バッドマザー」から切り離して幻想のなかに作りだす必要性に駆られます。

 

例えば:

【お母さんは忙しくて大変なんだ、僕(あたし)に怒ってるわけじゃない(と思いたい)、じゃああたし(僕)がお母さんを助けてあげなくちゃ、あるいは心配させないように本音を言わずにいい子でいなくちゃ。

そして、助けてあげれば、心配させないようにいい子でいれば、お母さんは自分を好きでいてくれるだろう(良い母になるだろう)と思う(思いたい)。】

 

ここに「グッドマザー」と「バッドマザー」がお互い分離して子供の心理内に形成されます。

 

この例では、母親から怒られる(嫌われる)んじゃないか(=バッドマザー)という不安に耐え難い無力な自分を見ないようにするために、自分が母親を助けたり心配かけなければ、母親は安心な存在でいてくれるはずだ、との理想を形成しています。

 

母親は自分を好きでいれくれる、ズレはない、つまり独占できている、という「グッドマザー」幻想を自分の内部に持てる、ことになります。

 

そうすることで、不安=「バッドマザー」から切り離されて、仮初めではありますが、安心することができるというものです。

 

しかしながら、この分離状態が固定されたまま成長すると、少々やっかいなことになっていきます。

 

2020年11月29日