「グッドマザー」と「バッドマザー」⑥

大人になってどう現れるかー本音を抑圧

さて、「グッドマザー」と「バッドマザー」が分離されたままだと、成長するにつれてどんな問題がおこってくるのでしょう。

 

当然ながら、同一人物の母親に対し、全く別々の見方をしていることは大きなジレンマです。

このジレンマに由来する気持ちに苦しむことになります。

 

まず、本音を出せなくなることが挙げられます。

 

心的現実とはいえ、自分の気持ち(ホンネ)に反して/ズレて、理不尽なことをしてくる母親(バッドマザー)。

その母親に対して、嫌いとは思えないで(思ったら危険なので)、好きでいなくてはいけない母親(グッドマザー)。

 

そんなジレンマがあるはずです。

 

しかも「好きでいなくてはいけない」というある種の義務感・強制感も、母親との間の安心感という甘美な理想の中に埋没して、本当は自分が仕方なくそれをやっていることに気づきにくくなっている。

つまりかなり巧妙にホンネを抑え込んでいるのです。

 

結論としては、理不尽なことをしてくる母に、ひいては人間関係において、「それは理不尽だからやめてほしい」とホンネを言っても関係が壊れる(=母に嫌われる)ことはない、とわかればいいのですが、そこまで行くのは、カウンセリングがある程度進まないと辿り着かないと思えます。

 

ホンネを出したらお互いのズレが露呈してしまうので、ホンネは出さない方がいいという気持ちが、成長するうちに、自らの自然な=自発的な感情や個性を出さない方がいいという精神構造になってきます。

 

自発は全ての生き物の生きる源泉ですから、そこをずっと抑え込んでいると苦しくなるのは無理もないわけです。

 

2020年12月14日