カウンセリングという体験について②

表現する

体験体感することとほとんど同じ意味ですが、カウンセリングにおいて(ひいては人生の過程全てで)、表現することが、表現し続けることが基本であり、肝心なことだと言いたいです。

実際にセッションの場でも、折りに触れてそう申し上げます。

 

表現する、ことを実は、私達はしていないことも多いものです。

 

ぼんやりと、しかし心にひっかかっていることなのに、日々のルーチンにかまけて、文字に残していないこともありましょう。

 

一応は自分の頭の中で考えて、メモにもしているが、後で読むといまひとつ何を言いたいかが判然としないこともありましょう。

 

あるいは、本を読んで、ああこれだと自分の状態が分かった気になっても、しばらく経つと意外に自分の中に何も残っていないこともありそうです。

 

表現するとは、まず「自分自身のことば」によって表現することが必須だと思います。

書籍等からの借り物のことばでは真の自分を表現できません。

 

これは自分のことばだな、と感じることが言える(表現できる)と、そのことばによって、背後にある自らの気持ちや感情などが「取り扱い可能」になってくる感覚が生じます。

重要なことですし、これも体験しないと分からないと思います。

 

同時に、「相手に伝わることば」であることも必須です。

言葉は意外に精密なもので、自分だけでぐちゃぐちゃと考えているだけだと、正確さや意味合いも当の自分にとって曖昧なままだったりします。

 

セラピストからの問い返しがことばの曖昧さを削ぎ落とし、あるいは自分では思ってもいなかった別の角度からの見方を提供してくれます。

 

そして相手に伝わることばを自分が紡ぎ出してはじめてことばは普遍性をもち、そのことが即自分を理解する有用な道具となっていくものです。

 

これらの体験を足がかりに、一歩一歩自分への気づきが前進していきます。

 

2021年6月11日 佐藤