己事究明と山岳ガイド
己事究明のことを以前も書いたことがありますが、己事究明とは禅の根本精神です。
己(おのれ)のことを探求する為に禅の様々な修行がある、その逆ではない。
修行をしていれば結果的に悟りに行き着くというものではない、常にまず己事究明の態度が問われる。
カウンセリングにも全く同じことが言えると思います。
自分のことを自分で探求する意欲、生をよく生きたいというモチベーション、真実や本質に触れたいという人間性の尊重。
改めてこのことを書いたのは、セラピストとしての自戒の意味もあります。
カウンセラーは山岳ガイドに過ぎなく、登山者(クライアント)をおんぶしたり、ガイドのペースで歩きたい道を行くことはもはやガイドではない。
早合点してクライアントにアドバイスすることは、ガイドであるべきカウンセラーの「おんぶ」=自己満足である場合が多く、それは自分で己事究明を目ざすクライアントにとっては押し付けでしかない。
登山者の目指す場所はそれぞれ違うし、そこに至る道のりも皆違う。
ガイドは、多少の経験があり勘所もわかるので、難所や急な天候の変化への対応法を知ってはいる。
それでも、やはり登山者の歩く道は、ガイドにとっても驚くような未知の場所であることも多く、その道を共に歩くしかない。
2021年7月16日 佐藤