心ここにあらず
強迫性の特徴として、頭で延々とシミュレーションを繰り返していて、本人自身はあまり気づきませんが、非現実的つまり幻想的な思考をする状態にあります。
例えば、鍵をかけるという行為の最中にも、「ちゃんと漏れのないよう戸締まりしなくちゃ」という追い立てられるような気分に支配されている、要は頭でシミュレーションすることに囚われていますから、鍵をかけた行為の身体的実感や行為を達成した精神的な満足感に欠けています。
心身の実感に欠けているので、鍵を締めて歩きだしても、「あれ本当に鍵をかけたかな?」とついさっきの自分の感覚を信じられなくなってくる。
結果戻って戸締まりを確かめたくなってしまう。
強迫性の方に強迫行為の時の気分を「心ここにあらずという感じですか?」とお聞きすると、「その通りの感じだ」という返事が返ってきます。
この、心がその場にないということ、すなわち心身の実感に欠けることをどう考えればいいか?
その回答が、なぜ強迫性が症状化するのか、苦しいのか、という疑問に答えることになります。
先に答えを書くと、前回書いた「自己阻害」が現象として起こっていることだが、根本の動機には「自発の抑圧」がある、と言いたいと思います。
次回に続きます。
2021年9月3日 佐藤