カウンセリングの現場では⑤

自己イメージ

ご相談者がしばしば話すことに「育った環境しか知らなかったので、それが当たり前と思っていた」というものがあります。

 

育った環境(家庭・家族)しか知らないのは、それこそ当たり前のことですが、上記のことを言えるということは、ご相談者が自分の中で無意識に当然と思っていた(本人と家族との関わりのなかからうまれた)価値観・習慣・倫理等について意識の上に引き上げ、検討し直そうという姿勢が出来始めたことを意味します。

 

自己観察が自分への気づきを深めてゆく基本ですが、この姿勢は自己観察的態度への大きな一歩と言えると思います。

 

これと同じような心理構造で、これもご相談者が時々言うことばに「自分と他人で自分への見方や評価が違う」というものがあります。

 

私がご相談者と話していて、例えば「このご相談者は仕事ができそうだけど、本人はほとんどそう思っていないようだ」と感じることがありますが、これも自分(ご相談者)と他人(カウンセラー)で見方が違うことの一例です。

 

つまり自己イメージが現実とずれている(上記の例では、自己イメージが現実よりもよくない)、錯覚と言ってもいい。

 

ご相談者が育った環境の様々な要因のなか、自発の部分を疎外し、家族・家庭へ適応していく過程で自己(自発)イメージが中断した、傷ついた、置いてけぼりにされた等の想像が私には浮かびますが、ここはご相談者とカウンセラーが一緒に探求してゆきたいポイントです。

 

「当たり前と思っていた」自己イメージに向き合うのは、ある意味慣れ親しんだ自分なので、つらい感じもありますが、向き合った結果自分のことを深く理解できると、つらいことを上回る収穫があるはずです。


2022年11月4日 佐藤