カウンセリングの現場では⑪

ストーリー性と非ストーリー性について(続々)

ストーリー性を離れる、ということを言い換えてみますと、

 

「人間、その場その時にならないと本当の気持ちは分からない」ということになりそうです。

 

修羅場で人の本性や実力が出る、とか、誰かを失ってみて初めてその人の大切さが分かる、という話も思い浮かびます。

 

誰かと映画を見に行く、ある会合に出席する、そんなことも当日にならないと気持ちが固まらないことを誰しも経験していると思います。

 

前回までの例でいうと、翌日の活動をきちんと完璧にこなそうと思っている時点で、その場その時の自分の気持ちが存在することに目を向けていない、と言えそうです。

 

その出来事が大きいほど、その場その時のことを考えるのは不安になるし、その不安を前もって取り除きたいと思う気持ちも分からないではありません。

 

しかし、前回の例で言うと、その場その時の不安を前もってどうにかしようとすればするほど眠れなくなる。

 

眠れなくなるのは何故か。

 

私が考えるに、その人が不安と思っている出来事そのものの中に飛び込んでいくことが本質的に不安を軽くする、前もって色々考え眠れない時の心理というのは、どこか、要領よくまとめよう、とか、失敗した時の立ち回り方を考えている、つまり、本質とはズレたところに意識を持っていっているのではないか。

 

それをしたところで本当の不安解決にはならないので、それこそ本当の不安を感じ、眠れなくなるのではないか。

 

なので、その場その時に臨み自分を出すのは不安だが、それを引き受けるしかない。

 

同じ前もって考えるのでも、自分をどう出すかに集中して考え、あとはその場その時の自分に任せるしかない、という気持ちだと眠れるのではないでしょうか。

 

2023年12月7日 佐藤